MIコンセプトに基づいたポーセレンラミネートベニア修復 後編

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MIコンセプトに基づいたポーセレンラミネートベニア修復 後編

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木. 25 8月 2016

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メインテナンス・リペア ポーセレンラミネートベニアの形成は、エナメル質内にとどめるのを基本とするため、術後疼痛のトラブルは認められない。多く認められるトラブルは、ポーセレンラミネートベニアのクラック、チッピング、破折などである。これらの原因の一つに、患者の不注意がある。すなわち、不意の転倒などの事故、誤って硬いものを食べてしまったなどで、この場合の再修復は、当院では有償となる。

図22に、(矮小歯)の形態改善を主訴に来院した患者の口腔内を示す。最小限の歯質の切削を行い(図23)、ポーセレンラミネートベニアを装着した(図24)。ところが、8ヵ月後、修復したことをうっかり忘れて、硬いせんべいを同部位で嚙んでしまい、破折してしまったとのことで来院した(図25)。
ポーセレンラミネートベニアのクラック、チッピング、破折のもう一つの原因として、外傷性咬合やブラキシズムが挙げられる。これらは、メインテナンスのなかで咬合チェックを行い、咬合調整やスプリント装着などで回避できるものも多い。したがって、定期的にメインテナンスのなかで咬合のチェックをしているにもかかわらず発生したトラブルの再修復は、当院では無償となる。

図26に、ポーセレンラミネートベニアの破折を主訴に来院した患者の口腔内を示す。患者は、他院でポーセレンラミネートベニア装着後、16年間ほとんどメインテナンスを受けていなかった。歯質に残っているポーセレン部にベベルを付与し(図27)、金属、ポーセレン、ジルコニア、コンポジットレジン、歯質とさまざまな被着体に接着性をもつシングルステップマルチユースのボンディング材を塗布した(図28)。その後、コンポジットレジンにてリペア(補修修復)した(図29)。
なお、同部位にはフレミタスが認められたため、咬合調整後、ブラキシズムへの対応としてナイトガードを作製した。さらに定期的な咬合チェックの必要性を患者に伝え、定期的なメインテナンスのなかで、同部位を経過観察することとした。

図30に、前述(図10〜21)したポーセレンラミネーベニア装着1週間後の患者の口腔内を示す。患者には定期的なメインテンンスの必要性を伝え、同意を得た。
6ヵ月後のメインテナンスで、歯科衛生士が下顎小臼歯のポーセレンラミネートベニア部にクラックを発見した(図31)。同部位に冷水痛などの症状は認められず、患者も歯科衛生士の指摘があるまではクラックに気づいていなかった。
クラックの発生は、同部位の過度の咬合接触が原因と考えられたため、咬合調整を行った(図32)。次に、クラックの周囲のポーセレン部を一層削除し、口腔内サンドブラスターにて表面処理1)した(図33)。その後、ポーセレンプライマーを塗布、エアブロー後、ボンディング材を塗布し、光照射した(図34)。
現在、筆者はこのような場合、シングルステップマルチユースのボンディング材を使用している。その後、コンポジットレジンにて修復した(図35)。

図36に、1年後の口腔内を示す。クラックの再発などのトラブルは認められない。図37に、3年後の同患者の口腔内を示す。トラブルは認められないが、フレミタスが認められた部位は咬合調整を行った。図38は、5年後である。トラブルは認められず、咬合も安定している。図39は、7年後である。定期的なメインテナンスによりポーセレンラミネート部のクラックを早期に発見し、原因因子を排除しつつ、リペアすることにより、再治療を回避できている。
強度の弱いポーセレンラミネートを用いた修復を長持ちさせるには、確実な形成と印象採得に基づいて製作された適合のよいポーセレンラミネートベニアを、確実な接着操作により歯に装着することが重要になる。さらには、定期的なメインテンスのなかでポーセレンラミネートベニアにかかる咬合負担をチェックすることも忘れてはならない。それらのなかで早期に発見されたトラブルを審美的にリペアすることで、再治療を回避できる。

「修復と補綴のLongevity」(デンタルダイヤモンド社)
ぱんだ歯科 須崎 明

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